キミとの温度
#02
「…え?」
中学3年生の夏が終わる頃、わたしにとって大事件と呼べる出来事が起こった。
「お父さんに転勤でね、来年から東京に引っ越すことになったのよ」
わたしは中学に入り、友達もできた。
受験も、志望校はS判定を取っていたし、きっと順調に近い生活を送っていたはず…だった。
「東京…」
よくテレビで見るような、あの、人がたくさんいるところだよね。
派手な女の子とか、怖そうな男の人とか。
「でね、一応学校の候補探してみたんだけど」
お母さんから、いくつかパンフレットを受け取った。
田舎とは違い、おしゃれなデザイン。
写真でも伝わるほど、広そうなキャンパス。
「…あ!」
「気になるとこあった?
…あー、そこね。
エスカレーター式の名門で通常の外部入学は難しいけど、おじいちゃんが学園長と知り合いでね」
ここじゃないかもしれない。
…でも、きっとあの鍵が導いてくれるはず。
そんな気がした。
「陽菜の成績なら、試験も大丈夫だと思うわよ」
「お母さん、わたしここ受けたい」
「そう、じゃあそこが第一希望ね。
滑り止めも考えておきなさいよ」
「うん」
怖いけど、きっと大丈夫。