キミとの温度
……あ…れ?
何か当たってる?
これって、誰かの手…?
「…おいおっさん、いい歳して痴漢はダメっしょ」
「な、ななななに言うんだ?
私は痴漢なんて…!」
すぐ後ろから聞こえた二つの声。
さっきまで後ろに誰かが密着していたのに、声と共に、それもなくなった。
「大丈夫か?」
上から聞こえる声。
見上げると、茶髪の男の子がわたしを見ていた。
「…だ、丈夫です」
そっか、わたし、痴漢されてたんだ…
テレビだけの世界だと思っていて、現実でそんなことが起こるなんて。
見回すと、ぎゅうぎゅうに密着するほど混んでもなかった。
「この時間は乗らないほうが良いぞ」
「…はい」
だから、あんまり制服の子がいなかったんだ。
みんな知ってたんだ…
思い返すと、気持ち悪くなった。
「…っ」
「おい」
「…す、みません…」
「ー…」