キミとの温度
「よ、転入生ちゃん!」
「…えっと、拓郎くん…?」
「そーそー!
覚えてくれてたんだね、嬉しいわ」
拓郎くんは、わたしの斜め前の席だった。
拓郎くんが話しかけてくれたおかけで、少し元気が出た。
よかった、完全に一人ぼっちってわけじゃない。
挨拶してくれる人がいる。
「そうだ!名前聞いてもいい?
いつまでも転入生ちゃん何て呼べねーからさ」
「…如月 陽菜」
「陽菜ちゃんね!
よし、覚えた!」
ニッと笑う拓郎くんの笑顔が、公園での新の笑顔と重なった。
この人は新じゃない。
どうしても、どこかで新を探してしまう自分に嫌気が差した。
「あ、陽菜ちゃんの前の席は新の席だから」
新、の名前に反応してしまう。
違う新なのに。
「アイツ背が高いから、黒板見えなかったら俺に言ってね。
俺が新をー…」
「へぇ。
拓郎、俺に何してくれるの?」
「げ、新…」
気付けば拓郎くんの後ろに新くんが立っていて、拓郎くんはそんな新くんを見て苦笑していた。
「はよ」
「…おはようございます」
新くんはわたしの前の席に鞄を置いた。
「…なーんか、小さすぎて動物みてぇ」
え?
言われた意味が分からなく、新くんを見上げると、新くんの手がわたしの頭に触れた。
「ひゃっ!な、何するんですか?」
そのまま頭をくしゃくしゃっとされ、髪の毛が乱れた。
「別に、なんとなく」
…はいいいいい?
なんとなく、でわたしの髪の毛ぐしゃぐしゃなんですけど〜!
普段鏡やクシなんて持ち歩かないから、わたしは必死に手ぐしで髪を直した。