キミとの温度
外部からの転入生。
学校内で結構有名らしい、新くんが告白した相手。
物珍しくて遊ばれているだけの可哀想な子。
「…はぁ」
ただでさえ目立つのは苦手なのに、あっという間に噂は広まり、どこに行っても視線を感じるようになった。
わたしにも聞こえるように言われるのは、きっと新くんと仲良かった女の子達からの当てつけ。
まるであの時みたい。
「おはよ、陽菜」
「……おはようございます」
噂の張本人は相変わらず平然としていて、やたら話しかけてくるようになった。
馴れ馴れしく呼び捨てまでしてくる。
「怒ってんの?」
「怒っていません」
「怒ってんじゃん」
わたしは怒ってはいない。
ただ、悪化する状況に困惑しているだけ。
アユは学校に来ても話しかけには来なかった。
きっと、アユは怒ってるんだと思う。
「なぁ。
次の日曜、映画行かない?」
「映画…」
「陽菜行かないんだったら拓郎と行くしかねぇんだけど、さすがにこれは」
新くんがひらひらさせる映画チケット。
最近よく特集されてる、有名な恋愛物だ。
新くんと拓郎くんが二人でこれを観に行くことを想像したら、少し笑えた。
「そこ、笑うなよ」