キミとの温度
「あの、砂…っ」
「え?あぁ、気にしないでよ。
ちゃんと顔は守ったし」
戻ってきた男の子は、よく見ると髪の毛に砂がついていた。
やっぱりわたしを庇ってくれて…
「動かないで」
「え?うん」
わたしはその子の頭に手を伸ばして、髪についていた砂を払った。
ふわふわした柔らかい髪の毛だった。
「ありがとう」
「えと、こちらこそ」
自然と二人で傍にあったベンチに座り、話した。
その子は東京から来たらしい。
お父さんがこっちで単身赴任をしていて、夏休みの間に遊びに来てた、と。
ここは、東京からずっと離れた田舎町。
東京よりも早く夏休みは終わる。
その子は、夏休みが終わるから、明日には東京に帰るって言っていた。
それを聞いて、なんだかすごく悲しくなった。
「…また来るの?」
「うん、たぶん。
その時は一緒に遊ぼうよ」
「うん!」
「約束」
「約束」
二人で指切りをした。
また来年の夏休み、ここで会えますように。
わたしは、こっそり神様にお願いした。