キミとの温度
「遅くなってごめんね」
予想以上に着付けに時間がかかって、待ち合わせより15分も遅れてしまった。
「ううん、大丈夫。
俺もさっき来たばっかだし」
確か、こういうことって女の子が言う言葉って小説に書いてあったなぁ。
男の子に言わせちゃうなんて、最低。
「浴衣、似合ってるね。
かわいくてびっくりした」
「…っ」
「良かったら手、繋ごう」
「…うん」
なんだか恥ずかしくて、うまく話せなかった。
沈黙の中で、わたしの履きなれない下駄が小さく音を立てながら、二人でお祭りの神社まで歩いた。
「ひゅーひゅー!
地味子が手ぇ繋いでるー!
みんなに言ってやろう」
当然、お祭りには同じ学校の子がたくさん来ているわけで。
男の子には大声でひやかされ、女の子はわたしを見てコソコソ話していた。
似合わない浴衣なんか着ちゃって、学校でいろいろ言われると思うと逃げ出したくなった。
その度に繋いだ右手をぎゅっとされ、逃げ出す気持ちを抑えることができた。
「守ってあげられなくてごめん」
人ごみを抜けて神社の前に着くと、男の子はそう言った。
そんなことないのに。
わたしが今までどれほど救われてきたかを伝えたかった。