狂い狂ってまた明日
カエルの解剖以来、浅倉はちょくちょく陰のある笑みを浮かべる事が多くなった。
それと共に絡むことも多くなった。
だから女子からの嫌がらせが酷くなる。
この前は下駄箱に果たし状が入ってた。正直笑った。
もう、慣れてしまったことだから。







「そういえば何で右京は夏なのに冬服なのさ?」
浅倉が懲りもせず話し掛けてくる。
「...別に」
あいも変わらず私は冷たく対応した。
「えぇ、気になるじゃん。教えてよ」
また、陰のある笑みになった。
「嫌だ」
一層笑みが深くなる。
何故か見透かされているようで、怖い。
「んー、じゃあ予想してみていい?」
「勝手にすれば」
「...虐待、とか?」
「!?」
びっくりした。
「あ、図星?」
こいつは...本当に見透かしているのか?
もう誤魔化せない。そう感じた私は全てを話すことにした。




昔、私のお父さんは女を作ってお母さんを捨てた。
新しく来たお父さんは優しい人だった。
...外見だけは。
新しいお父さんはお母さんの前ではとってもいい人だった。いつも手伝いをして、よく遊んでくれて。完璧な父親とはまさにこの人だと思う。
あの時までは。
ある日、お父さんは私の部屋に来た。
その時は小学五年生。思春期に成り立ての私は多少の抵抗がありつつも父を受け入れた。
...それが間違いだった。
私は無理矢理父親に襲われた。
最初は何をされているかわからなかったが、とにかく痛かったのは覚えている。
嫌だった。気持ち悪かった。
それから毎日色んなことをされた。殴られたり、蹴られたり。もちろん気持ち悪いこともした。
それは今も続いている。
私はそれにじっと耐えて生きているのだ。






「...へぇ、大変なんだね」
「そう言ってる割には他人事だね」
だから嫌いなんだ。
この話をするのも、人間も。きらいだ。
「いいや?」
「...嘘だ」
「ほんと。だって俺、父ちゃん暴力団に殺されてるもん」
「...は?」
いきなりのカミングアウトに私は少し驚く。
が、すぐに嘘だと思った。突飛すぎるだろう。
「あ、信じてないでしょ。本当なのに。ほら、高橋組事件覚えてる?」
「...確かあったような」
「そこで殺されたの、俺の父ちゃん」
ニコニコと笑いながら浅倉は話す。
「俺ね、いつか復讐しようと思うんだ」
「...ふーん」
「その時は右京も協力してよ?」
「...うん」
< 3 / 6 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop