今、欲しいのは暗闇だけ。
夕飯のミートソーススパゲティを食べ終えたばかりの私に、電話がかかってきた。
『岩崎?今からオデオン付き合えよ。観たい映画あるんだ』
同じクラスで前の席の篠田だった。
2年生になってから、同じクラスになった篠田と藤枝は、何かっていうと、私と夏美のところに寄ってきちゃ笑かしてくれる。
時計を見たら、夜8時15分。
何いきなり。
「…ええ?映画?こんな時間から?なんの?」
『えっ…?なんのって?それはその』
電話の篠田の声って、結構いいじゃん、とか思う。
「タイトル!邦画?洋画?」
『….タイトルぅ?ああー…ど忘れした…なんか、世界中の皆が涙した超大作とか…看板に書いてあったかな、行けば分かるよ、みたいな?ハハ!』
すっとぼけた篠田の答えに、私はずっこけた。