YELL
「咲原さんって、めっちゃかっこいいよな!!フレー、フレー、そ、ら、だーい」
そう言って一人、エールの振りを真似し始めるのは、一回生のリーダー、古池尊(ふるいけたか)だ。
咲原さんは、我が青空大学応援団の団長である。確かに、咲原さんは団長としてのどっかりした雰囲気がある。けれど、普段は冗談をよく言うかわいらしい人で、そのギャップにめろめろのファンも多いらしい。
比菜も咲原さんはとってもすてきだと思っている。咲原さんを見ると、応援団のかっこよさもすごく感じるし、あんな風に人に元気を与えられるようになりたいと思う。
「咲原さんはそんなエールしないけどね!」
比菜が言うと、
「分かっとるわ!いやでもいつかは越えるからな!」
「尊が?!まあ、目指すのは良いけどな、頑張れー。」
「絶対無理や思てるやろ!見とれよー!」
いつもの言い合いを始めると、
「尊ならいけると思うで!頑張れ!!」
はる子がいつもにないようなことを言い出した。
「え!?」
比菜と、はる子と、そしてもう一人の一回生リーダー、神田広也(かんだひろや)は、かなり驚いた。
比菜は目をぱちぱちさせ、
「何はる子!尊にほれたの!?」
と言うと
「は!は!?あほなこと言うな!」
はる子はやけに思い切り否定した。
「なわけないでしょ。はる子が尊に?」
と広也のツッコミが入り、
「比菜、ふざけたこと言うなやー!」
と尊も続けて否定した。
比菜一人、男の子って、鈍いんだなあと思っていた。
「てか比菜、ほんと今日ごめんな!こわかったやろ?」
はる子が言った。
「ん?あ、スタンツのことな。謝るのなしって北原さんも、言うてたやろ?悪くないんやから、そんなん言わんといて。」
「うん。ありがと。やっぱ比菜、トップの才能ありそうやで。初めてで上手くいってたし。うらやましいわ!」
比菜は、前の感じを思い出した。練習も何回もしてきて、はる子よりダンスが覚えられない比菜は、はる子に聞いては確認し、それを家でも練習するという繰り返し。それでも、どんどん応援で使う短い曲、「マーチ」はどんどん増えていって、一回ごとに覚えられる量ではなくなっていた。
はる子はダンス部での経験から、覚えることに慣れていて、振り写しされたらその場でダンスを覚えてしまうようだった。
「だから、はる子。それ、本気で言ってるん?私ははる子みたいに上手く踊りたくていっつも悩んでるんやけど。」
また、きつい言い方をしてしまった。自分勝手だ。はる子は悪くないのに。
「おい、なんでいきなりキレるんだよ。ちょっと落ち着け。けんかするなー。」
女の子の練習を見ていない尊はそう言う。でも、何も間違ってない。
「んー。もう今日のごはんパス!」
比菜は、自分でも分かっていた。上手く自分の気持ちを言葉にして伝えられなくて、自分の中で抱えきれなくなってしまう。でも、こんな風に人にぶつけたのは、家族以外では初めてかもしれない。応援団にいると、いつも心が落ち着いていなくて、嬉しかったり怒ったり落ち込んだり感動したり、気持ちの動きが激しい。今までにない感じ。
みんなと別れて、一人で家に帰りながら、自分で怒っているのかどうか分からなくなってきた。
そう言って一人、エールの振りを真似し始めるのは、一回生のリーダー、古池尊(ふるいけたか)だ。
咲原さんは、我が青空大学応援団の団長である。確かに、咲原さんは団長としてのどっかりした雰囲気がある。けれど、普段は冗談をよく言うかわいらしい人で、そのギャップにめろめろのファンも多いらしい。
比菜も咲原さんはとってもすてきだと思っている。咲原さんを見ると、応援団のかっこよさもすごく感じるし、あんな風に人に元気を与えられるようになりたいと思う。
「咲原さんはそんなエールしないけどね!」
比菜が言うと、
「分かっとるわ!いやでもいつかは越えるからな!」
「尊が?!まあ、目指すのは良いけどな、頑張れー。」
「絶対無理や思てるやろ!見とれよー!」
いつもの言い合いを始めると、
「尊ならいけると思うで!頑張れ!!」
はる子がいつもにないようなことを言い出した。
「え!?」
比菜と、はる子と、そしてもう一人の一回生リーダー、神田広也(かんだひろや)は、かなり驚いた。
比菜は目をぱちぱちさせ、
「何はる子!尊にほれたの!?」
と言うと
「は!は!?あほなこと言うな!」
はる子はやけに思い切り否定した。
「なわけないでしょ。はる子が尊に?」
と広也のツッコミが入り、
「比菜、ふざけたこと言うなやー!」
と尊も続けて否定した。
比菜一人、男の子って、鈍いんだなあと思っていた。
「てか比菜、ほんと今日ごめんな!こわかったやろ?」
はる子が言った。
「ん?あ、スタンツのことな。謝るのなしって北原さんも、言うてたやろ?悪くないんやから、そんなん言わんといて。」
「うん。ありがと。やっぱ比菜、トップの才能ありそうやで。初めてで上手くいってたし。うらやましいわ!」
比菜は、前の感じを思い出した。練習も何回もしてきて、はる子よりダンスが覚えられない比菜は、はる子に聞いては確認し、それを家でも練習するという繰り返し。それでも、どんどん応援で使う短い曲、「マーチ」はどんどん増えていって、一回ごとに覚えられる量ではなくなっていた。
はる子はダンス部での経験から、覚えることに慣れていて、振り写しされたらその場でダンスを覚えてしまうようだった。
「だから、はる子。それ、本気で言ってるん?私ははる子みたいに上手く踊りたくていっつも悩んでるんやけど。」
また、きつい言い方をしてしまった。自分勝手だ。はる子は悪くないのに。
「おい、なんでいきなりキレるんだよ。ちょっと落ち着け。けんかするなー。」
女の子の練習を見ていない尊はそう言う。でも、何も間違ってない。
「んー。もう今日のごはんパス!」
比菜は、自分でも分かっていた。上手く自分の気持ちを言葉にして伝えられなくて、自分の中で抱えきれなくなってしまう。でも、こんな風に人にぶつけたのは、家族以外では初めてかもしれない。応援団にいると、いつも心が落ち着いていなくて、嬉しかったり怒ったり落ち込んだり感動したり、気持ちの動きが激しい。今までにない感じ。
みんなと別れて、一人で家に帰りながら、自分で怒っているのかどうか分からなくなってきた。