シャイン
「待たせてごめんね、ホームルーム始めます」
井上が前のドアから教室に入っていく。
中からは“先生おせーよー”とか“自己紹介してー”とか、賑やかな声が聞こえる。
この中に、入っていけっつーのか。
まるで拷問だな、俺はどーせ白い目で見られんだ。
鞄、俺は鞄だけ取りに行けばいいんだ。
後ろのドアを開けると、クラス中の目線が俺に集中した。
その瞬間、奴らの顔色が変わる。
“ヤンキーだ”
目で、何を思っているかが分かる。
今まで何度も、腫れ物に触るような目で見られてきた。
ただ、俺は自由に生きているだけ。
やりたいこと、したいことをしてるだけだ。
それの何が悪い。
「秀司!お前の席ここ!」
一番後ろの窓側から二列目、笑顔で手を振るのは小暮。
分かってるっつーの、さっき一緒に鞄置きに来ただろーが。
小暮が指さした隣の、窓側の一番後ろの席は何度もなったことがある。
問題児は、ここって決まってる。
暗黙のルール的なもんだ。
騒ぐと大変だからなるべく回りに人がいない、授業の邪魔にならない、一番後ろ。
廊下側の端だと、後ろ側のドアに人が寄り付きにくいから、窓側。
そんな席が俺には用意される。
もちろん近くには、理解者を置く。
俺の前後左右のどれかには三年間いつでも小暮がいた。
もう俺は、隔離されてる。
クラスメイトの、教師の、頭の中で。
邪魔だと、無駄だと、唱えられている。
それが痛いように聞こえるのは、きっと気のせいじゃないんだろうな。
席に近づいて、机に掛かったスクバをリュックにして背負う。