星降る夜に。
「莉子の事情も分からないでもないよ。実家を守りたいのも、お姉さんたちの生活を守りたいのも、それは当然だと思う。莉子がおばさんたちを支えてたのを見てきたもん。
だけど、そんなにうなだれるほど吉岡さんが好きなら、せめて気持ちだけは伝えたほうがいいと思うけど」



うなだれているつもりはなかったけれど、そう言われて顔を上げた時点で、そうなっていたことを否定出来なかった。



「好きだって言ってないんでしょ?」


「そんなこと言えな…」


反論しようとしたとき、バッグの中からスマホの着信音がして取り出すと、ディスプレイには大輔さんの名が表示されていた。

電話がかかってくるなんて…。

みのりはそれを覗き込んで、通話をタッチしてしまった。



「ちょっと」


“早くしなさい”と口パクで焚きつけてくる。

出ないわけにはいかない…。



「もしもし…」


「俺。誰かと一緒だった?」


「友達と飲んでて…」



腕時計を見ると、22時を過ぎていた。電話の向こうは静まり返っている。大輔さんはまだお店にいるのかな…。

みのりは私の横にやってくると、スマホに耳をくっつけて息を殺していた。
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