星降る夜に。
タクシーで30分ほど行くと、大輔さんの家の最寄り駅に着いた。
生温い風と蝉の鳴き声。
私がタクシーから降りるとき、みのりは私の背中をポンと叩いた。
「莉子、自分にも吉岡さんにも正直にね。この先どうするとかそういうことは別にして、ちゃんと話すのよ」
「…ありがとう」
みのりを乗せたタクシーは走り去ってしまった。
大輔さんが近づいてくる。
黒の細身のパンツと白いワイシャツ。どこも変わったところはないのに、彼を包む寂しそうな空気が伝わってくる。
「大輔さん…みのりを知ってるの?」
「莉子の姉ちゃんが彼女も連れて、俺に話があるって来た。だからまあ…顔見知りかな」
「それ、いつ?」
姉はいつの間に大輔さんに会っていたんだろう…。しかもみのりまで連れて。
私がネックレスを買ってあげたときか、結婚指輪を買うときに付き合ってもらったとき…。
どちらかで大輔さんの連絡先を聞いたのだろうか。
「結婚指輪を買いに来たとき。帰りに用があるって言って莉子たちと別れただろ?俺に話したいことがあるからって。そこに村田さんも同席してた」