星降る夜に。
「莉子、それは脅しっていうんだぞ?」



顔を見なくても怒っているのが分かる。


必死に感情を抑えているような、低くて怖い声だ。




「姉にもみのりにも言わなかった。上手く言えないけど…私のプライドかな。この前、みのりに言われた。身売りでしょ?って。自分ではそんなこと認めたくなかった。確かに最初は恋愛感情なんてなかったけど、付き合ううちに好きになったし…。人当たりもいいし優しいし、この人ならいいかな?って。みんなが幸せでいてくれたらそれでいいと思った」



「俺が莉子の立場だったら、やっぱり悩むと思うよ。何が正しいなんて簡単には言えないことだもんな。俺が知りたいのは莉子が幸せかどうか、それだけだよ」




誠さんは私には申し分のない、立派な人だ。何の不満もない。
幸せだと思っていた。


大輔さんに出会うまでは。




「私はね、心の奥底で思ってた。一生忘れられないような恋がしてみたい、って。でもそんなのは誰でも一度は思いそうでしょ?そう思ってたの。あのときまでは」


「あのとき?」




顔を見るだけでもいいと思ってしまうくらい、大輔さんが好きだ。

彼に寄りかかって空を見上げると、三日月と小さな星が輝いていた。
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