星降る夜に。
「そんなに惚れた女なら、連絡先くらい渡してくれば良かっただろ。俺は何のためにお前を旅に出したんだ、バカ」
「バカとは何だ。お前が勝手にチケット取って行かせたんだろ」
莉子には連絡先を渡すことも出来なかった。
お互いに同じ気持ちだと思っていた。莉子からそういう気持が伝わってきたから。
“夢を見に来た。恋をしに来たんじゃない”
きっと男がいる。あの言葉は揺るがない強さだった。
「この東京で、偶然会えるなんてそうそうないぜ?まあそしたらそのときは運命だろうけど」
「そんなロマンチックなことねーよ」
横村は男のくせにロマンチストというか、夢見心地なタイプで、もっともジュエリーデザイナーとしてはそれでいいのかも知れない。
夢のあるものを創り出せるのだから。
「お前がいい相手を見つけて帰ってくると思ったのに…。ホントに見つけただけだもんな」
「見つかっただけいいだろ、この歳で」
「男はこれからだ」