星降る夜に。
そしてお盆が過ぎる頃、莉子は男と一緒にやってきた。結婚指輪を買いに。


正直接客なんてしたくない。

でも莉子に似合うものは俺のほうが知っている。
そうでも思っていないと、悔しさに負けそうだった。あの男は莉子に触ることが出来る。今の俺にそれは出来ない。
悔しくてたまらなかった。



「吉岡さん、ちょっといいですか?」



二人が指輪を見ているとき、一緒に来ていたお姉さんに声をかけられた。



「このあと、少しお時間ありませんか?莉子のことで話があります」



眉根を寄せる渋い表情に、ただ事ではないだろうと感じた。







莉子を見送ってから近くのカフェに行くと、お姉さんの隣に女性が座っていた。
莉子と変わらない年齢だろうか…。



「お待たせしてすみません」


「とんでもない。急に時間を作っていただいて…。こちらは莉子の友人の村田みのりさんです」




話は莉子の結婚についてだった。

実家の印刷所が倒産寸前だったこと、莉子が生活を支えていたこと、結婚相手との出会いや付き合う経緯。


男はただ莉子の実家を助けようと協力したらしい。そして付き合うようになった。
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