星降る夜に。
♦ロングアイランド・アイスティー
9月に入っても変わらず暑い毎日だ。
大輔さんと出会った頃よりも伸びてきた髪をポニーテールにする。
リビングに向かうと母が朝食を用意してくれていた。
工場は忙しさが落ちついたようで父もいる。
この家で暮らすのもあとわずか。結婚式の前には新居で誠さんと暮らし始める。
「莉子、来週だったよな?向こうの親御さんとの会食」
「うん、来週の日曜日ね」
「母さん何着て行こうかしら」
来週末、互いの両親を交えてランチをすることになった。誠さんのお母さんからの誘いで、親同士の親睦を深めようということになったのだ。
いよいよだと身に染みる。自分のことなのに現実味がない。
「それにしても素敵な人と結婚が決まって嬉しいわ。工場を立て直せたのも誠くんのおかげだし、その人と莉子が結婚するなんてね」
「そうだなぁ、莉子はツイてる」
両親の何気ないやり取りに、何とも言えない気持ちになる。
両親は知らない。私と誠さんの間で何があったのか。もちろん言うつもりはない。自分で決めたことだから。