星降る夜に。
私は大輔さんに頼みごとをした。

会うのは次の土曜日、それで最後。


だからその日だけは私を彼女のように扱ってほしい、と。
少しの時間、好きな人と恋人同士のように過ごしてみたい。私がまだ知らない、大輔さんの一面を知りたい。



それは私が最後に見る夢だ。










お昼を過ぎて忙しさも少し落ちついた頃、私はようやく仕分けから解放されてデスクに就いた。相変わらず人手不足で、事務仕事とはいえそれは名ばかりの日々。

出勤して早々に溜まった伝票を分けたり計算したりするくらいで、あとは力仕事が多い。

ドライバーさんと再配達の連絡や、私が集荷に行くこともあるし…。



休めるうちに喉を潤そうと冷たい麦茶をグラスに注ごうとしたとき、裏口のドアが開いて岡村さんが帰ってきた。



「ただいまー。暑い暑い」


「お帰りなさい。銀行、混んでました?」


「月始めだからね、すごい人よ。待つだけで疲れちゃった」




岡村さんの分も麦茶をグラスに注いで持って行くと、テーブルには大きな紙袋が置かれていた。有名和菓子店の袋だ…。
前に横村さんが持ってきてくれたものと同じ。
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