星降る夜に。
「私は結婚します。大輔さんを選ぶなんて出来ません」



選ぶまでもない。

私は誠さんと結婚する。それでいい。そうじゃなくちゃ…いけない。



「それなら大輔が思い残すことがないように―――未練が残らないくらい、いい女でいてやってよ」



未練…。


どうしたら未練が残らないのかなんて、私が知りたい…。

横村さんは私の言葉を待たずに行ってしまった。
この恋の終わらせ方を、私は知りたくない…。










「ランチのことなんだけど、和食でいいかな?母さんがフレンチと迷ってるらしくて、莉子に聞いてこいって」



翌日は仕事が終わってから誠さんに誘われて、居酒屋で落ち合った。

急な誘いだったからハートのネックレスだけ外して、制服姿のまま。



「和食がいいかな。うちの両親、外食なんてほとんどしないでしょ?父さん、テーブルマナーでひっくり返っちゃうから」


「それなら和食…懐石料理になるかな。母さんが気に入ってるところがあるって言ってたから」




普段からそういうものを食べている人とは住む世界が違う。誠さんのお母さんは子育てが終わってからは外食が多いらしい。働いていて忙しいし、夫婦二人ならそれもアリだろう。
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