星降る夜に。
あの日まではそう思っていた。私には立派すぎる人だし、優しいし何の不満もなかった。


だけど大輔さんと出会ってあの島で共に過ごした短い時間で、私の気持ちは変わってしまった。でも全てを捨てられるような覚悟もなくて、気づかないふりをしていただけなんだ。




「この前の土曜日、そいつと会ったんだろ」



私は無言で頷いた。



「その人と最後に会う約束だったの。彼は再会したときから私に手を出さなかったし、それはお互い分かってたこと。あの日…私が縋ったの。何もないまま帰りたくない、帰れないって」



ただお酒を飲んで食事をしただけでは帰れなかった。

私はずっとそれを望んでいたから。




「どうしてそんなバレるモン、つけられてるんだよ!」



誠さんは思い切りテーブルを叩きつけた。ドンという大きな音にびくりとしてしまう。


大輔さんはキスマークをつけるつもりなんてなかったと思う。愛撫のときだって強く吸いつかないように自分を抑えているような感じだった。

それを私が大輔さんの体に自分のしるしを残したから、きっと大輔さんだって…。



「私が先なの」


「先?」
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