星降る夜に。
あれから数日経ったある日、仕事中に母からすぐに帰るようにと連絡が入り、ただごとではない声色に早退して家に帰った。
家では両親と姉が待っていて、重苦しい空気が漂っている。
「莉子、誠くんから連絡があったわ。婚約解消したいって。莉子に手を上げてしまったって言ってたけど、一体どういうことなの?うちは誠くんのおかげで立て直せたのよ。莉子、何をしたの!」
母は金切り声でそう言うと頭を抱えてしまった。
「仕事がなくなったら今度こそ倒産するかも知れないな…」
誠さんは何も言わなかったんだ…。手を上げられるようなことをしたのは私なのに。
「莉子、ちゃんと答えなさい!」
「母さん、莉子は何も悪くないわよ。それに男女のことなんだから何があったかなんて私たちには分からない。この際だからハッキリ言わせてもらうわ」
「お姉ちゃん、ダメ」
姉は私の前に手を出すと首を振った。
自分で決めたことだし、何があっても一生言うつもりはなかったのに…。
「今までこの家を守ってくれたのは莉子なのよ。莉子は自分を犠牲にして、自分の人生と引き換えに全部を守ろうとしたの」
「どういうことだ…?」
父も母も呆然と姉を見ている。
私と誠さんは普通に付き合い始めたと思っているのだから当然だ。