星降る夜に。
「経営が立て直ったあと、莉子は誠くんといずれ結婚する約束で付き合い始めたそうよ。工場の安定と引き換えにね。私もつい最近知った。まあ、好きで付き合い始めたとは思ってなかったけど」


「それじゃあ…莉子はうちを助けるために?」



父の問いかけに、ただ頷くしかなかった。


打ちひしがれている両親をよそに、姉は話を続ける。

GWの旅行、大輔さんとの出会いと別れ、再会、そしてまた別れ…。
全部ついこの前のことなのに、ずっと昔のことみたいだ。



「英里子がそんなことしなければ莉子は今頃、誠くんと幸せにやってたじゃないの!どうしてそんなことしたの!」


「そうよ、私が全部悪い。だけど私は莉子に素直に生きてほしかった。彼と出会ってからの莉子は女として綺麗だったわ。もし由衣が自分を犠牲にして私たちを助けようとしたら全力で止める。反対する。莉子には姉として、娘を持つ母親として、幸せでいてほしかったのよ」



涙はたくさん流したはずなのに、まだこぼれてくる。



「従業員の生活だってあるのよ!これからどうなるの…」



母は泣き出してしまった。今度こそ本当に路頭に迷わせてしまうかも知れない…。
両親の生活は私が一生面倒見る。でも他の人たちは…。
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