星降る夜に。
今夜は大輔さんの夢を見られたらいいな。

夢の中で抱きしめてほしい。
私を好きだと言ってほしい。求めてほしい。



…何を考えているんだか―――。
大輔さんとの思い出に浸っていいのは、まだまだ頑張って、もっとしっかり生きられるようになってからだよ。



部屋に戻ってゆっくりお風呂に入ろう。



そう思って体を起こしたとき、砂浜を歩くサクサクとした音が背後から聞こえた。





「…莉子?」





甘く響くその声を、私は知っている。

だけどまさかここにいるはずが―――。



期待しないように深呼吸をしながら振り向くと、その人は私を見つめて微笑んでいた。


初めて会ったときと同じデニムのハーフパンツに黒いタンクトップ、それにビーチサンダル。




「今朝、横村の家族旅行に一緒に連れてこられて…。さっき莉子の姉ちゃんに会わされた。あの二人がお節介焼いたみたいだなぁ」



お姉ちゃん、いつの間に横村さんに会ってたんだろう…。
これは仕組まれた旅行だったんだ…。



「結婚しなかったって聞いたけど、俺のせいか?」


「違う。私が大輔さんを好きだったから、結婚しなかった」



いつどんな瞬間だって、私の心の中にはこの人がいた。




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