星降る夜に。
思わず「欲しい」と言ってしまうと大輔さんはにっこり笑って、「莉子に一番にやる」と言ってくれた。


胸がズキンと痛む。

それは叶わないこと。

私はこのネックレスを大事にする。私のお守りとして身につける。

そう決めた。



私は自分のことはあまり話せなかった。

話したくても後ろめたくて、当たり障りのないことだけを言った。


小さな配送会社で事務をしていること、両親が印刷所を営んでいること、姉の旦那さんがそこで働いてくれていること。


本当なら最初から言えば良かったんだ。婚約者がいる、と。

いや、いつも薬指につけている婚約指輪をつけておけば良かったのかも知れない。

もっと言えば、ここに来なければ良かったんだ。


大輔さんとのことを後悔なんてしていない。
ただ、一緒にいればいるほど嬉しさと同じくらい切なくなる。
いつまでも一緒にいられないことくらい、初めから分かっていたのに…。

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