星降る夜に。
私が休日に父の工場を手伝っていたときに誠さんから連絡が来て、たまたま事務所で電話をしていた母の「宮坂印刷所」という声が彼に聞こえてしまった。

これがきっかけで、私も誠さんも互いに実家の話になったのだ。



「僕は高城出版の跡取りなんだ。今は全然そんなことなくて、営業部で経験を積んでるんだけど…。何の力もないけど、莉子ちゃんの役に立てるようにするから」




彼はそう言って、あっという間に融資してくれる銀行を父に紹介してくれた。
高城出版と古い付き合いだというその銀行は、彼のお父さんの信用を基に融資してくれた。

そして出版物の印刷を多数回してくれ、新しい機械も入れて工場は経営を立て直した。



誠さんは恩を着せるようなことは言わなかったし、私を口説いたりもしなかった。


だけど感謝してもそういう気持ちになれない私を見透かすかのように、彼は言った。



「もしお父さんの工場が潰れたら、働いてる人もお姉さん家族も路頭に迷うよね?銀行にも、うちの信用や面子が丸潰れになる。
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