星降る夜に。
「莉子。あのときの約束、憶えてる?」


「何のことですか?」



もし再会したらそのときは食事に付き合うと約束した。


忘れられるわけがない。

大輔さんのことだって、今も忘れていないのに…。



もっと声が聞きたい。
抱きつきたい。抱きしめられたい。
会いたかったと言いたい。

大輔さんと過ごしたい。



その気持ちを振り切って運転席に乗り込むと、大輔さんは助手席の窓を叩いてきた。私はエンジンをかける。
このままここにいたら、私の気持ちがこぼれてしまう。



「莉子!待ってるから連絡して!あの約束くらい果たしてくれよ」



私は助手席の窓を開けると、大輔さんに見えるように左手を出した。指輪が見えるように。


「私、婚約者がいるんです。もうすぐ結婚します。あの島でのことも私のことも、もう忘れてください。騙してごめんなさい」



車を発進させると、その場に立ち尽くしている大輔さんの姿がサイドミラーに映っていた。

この愛しい姿をいつまでも記憶に焼き付けておきたいと思った。
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