星降る夜に。
♦金曜日の約束
大輔さんに連絡をしないまま一週間が経ってしまった。
名刺は捨てられなくて、家にあるジュエリーボックスの中にしまってある。その中なら誰にも見られることはないから。
私が連絡をしないことで、大輔さんが私を諦めて忘れてくれたらと思った。
「莉子ちゃん、お昼行っていいわよ。それから外にお客さん」
「お客さん?私に?」
「背が高くてかっこいい男」
岡村さんは私の肩をポンと叩いた。
お客さん…誠さんかな?
ロッカーからショルダーバッグを取り出すと、急いで外に向かった。
8月に入った東京は晴天が続いていて、とにかく暑い。なるべく日焼けをしないように日傘をさした。
裏口から出て正面に回るとガードレールに腰をかけて、会社を覗き込む人がいた。
紺の細身のパンツとベスト、白いワイシャツ。左腕にはフェイスの大きい腕時計。
くっきりとしたその横顔に、思わず見惚れてしまう。
大輔さん…どうして…。
どうしたらいいのか分からなくて動けずにいると、ふいにこちらを向いた大輔さんと目が合った。