星降る夜に。
「えっ、そんなに?」


「彼氏、随分頑張ったね。俺なんか婚約指輪も買ってやれなかったよ」



ペンを落としてしまいそうなほど衝撃だった。

安く見積もっても200万前後ってこと?

そんなに高価なものを仕事中の今も身につけているなんて倒れそうだ。



どきまぎしながら配送料を受取って、領収書を渡す。

ちらりと大輔さんに目をやると、接客が終わりそうな感じだった。話さないまま帰りたいから、急いで荷物をまとめる。



「それではお預かりします」


「そうだ、莉子ちゃんのお姉さんが来たらサービスするから、近いうちにおいでよ」


大輔さん、あんなに何気ないこと覚えて話しててくれたんだ…。


「はい。姉が喜ぶと思います。それでは失礼します」



自動ドアのガラスに映る横村さんは笑顔で手をヒラヒラと振っていて、私は笑顔を返して外に出た。

まとわりつくような、湿気の多い重たい暑さだ。


車のドアを開けて荷物を置く。中にはどんなジュエリーが入っているんだろう。きっと幸せな気持ちになれるジュエリーだ。
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