星降る夜に。
「莉子」
いつもより低い声に呼び止められて振り返ると、大輔さんがやって来た。
ピシッと着こなしたスーツ姿が相変わらずかっこいい。
「何でそそくさ帰ろうとしてるんだよ」
「仕事中だし…大輔さんだってそうでしょ」
プライベートで会う分、なぜか仕事のときには会いたくない。公私混同してしまうような気がして。
「金曜日空いてる?」
「今のところは…」
大輔さんはおもむろに私の左手を取ると、不満そうな表情で指輪を見ていた。
横村さんとの話、聞いてたのかな…?
そのままにしておけばいいのに、大輔さんから隠すように咄嗟に手を隠してしまう。
「莉子、お盆は?」
「うちは世間の連休は関係ないの。GWは人手があったから休めたけど、今は人手不足だし忙しいから」
「男は寂しがるんじゃねーの?」
大輔さんは特に表情を変えることもなく、何気ないことのように言う。
「彼は家族旅行に行くの。本当は私も誘われてたんだけど、お義母さんは仕事を持ってるから事情を分かってくれてるし。その分、新婚旅行が大変そうだけど」