星降る夜に。
大輔さんは誠さんのことを知ってしまったんだ…。

誠さんの名前や存在が世間のどこまで知られているのか私には全然分からないけれど、横村さんが知っているということはそれなりの知名度なのだろう。




「俺は何も持ってねーけど、莉子を好きな気持ちは変わらないし、負けないと思ってる。けど…莉子が振り向いてくれないなら、やっぱり俺は負けてるんだよなぁ」




寂しそうに笑う大輔さんに、違うと言いたかった。
何一つ負けてなんていない、と。

私の心はとっくに大輔さんに振り向いている。きっと、初めて会ったあの日からずっと。




「莉子、これからヒマなんだろ?」


「家に帰るから気にしないで」


「少しだけ待ってて。そろそろ横村が来る頃だから連絡してくる。そしたら俺に付き合ってよ。まずはメシかな。昼飯食った?」



私が首を横に振ると、大輔さんはもう一度「待ってて」と言って店内に戻って行った。


誰のことも気にしなくてもいい、こんな時間は今だけなんだ。

それなら楽しもう。彼と一緒にいる時間を。




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