ためらうよりも、早く。
祐史はテーブル上に肘をつけ、手を組みながら「柚ちゃんの攻略が先決」と言った。
何を今さら、と饒舌な男に嘆息し、メイン料理の鴨肉のコンフィを口にして咀嚼する。
味覚にほぼすべての神経が囚われていると、ククッと小さく笑う声がして視線を上げた。
意外なことに、なぜか困ったように笑っている祐史と目が合ったため、言葉が見つからない。
「あの頃の柚希も可愛かった」
「なにそれ」
動揺を見破られないようにと食事を止め、カトラリーをさっきと同じ形にそれぞれ置く。
「……お世辞なんか言ってもムダよ。今日は奢らせるから」
昔馴染みという間柄でも、よほどの事情がない限りは割り勘が基本。
貸し借りを作るのは論外。この男に甘えるのはのんだけで十分。私はこの男と対等でありたかったから。