ためらうよりも、早く。
のんを乗せて出社すると地下駐車場で分かれ、別々のエレベーターに乗り込んで職場に向かう。
既に出社していた水橋さんと挨拶を交わし、そのまま専務室に一直線。
元来、片せる案件を翌週に持ち越すのは好きじゃない。まして、スケジュール的に暫くデスクワークに従事出来そうもない。
昨今ネットワークを駆使して仕事は出来るが、やはり出先で満足いく作業は出来かねる。
今日は出張の予備日にしてあったため、人と会う約束など一切入れておらずまさに絶好の機会。
次のコレクションの最終チェックやら、翌年度のイメージや予算案も上がっている。
私も社長も、ワンマンになる気はさらさらない。むしろ、裸の王様なんかゴメン被りたい。
基本的に各部門に任せる姿勢で、上に立つ者は状況把握するだけ。これが最も大切だと思う。
承認や許可で済ませるのは簡単。だが、それで自社の製品を胸を張って愛しているといえる?
——やっぱり、このメンドウな性格は遺伝ね。