ためらうよりも、早く。


そして、水橋さんが帰宅前に淹れてくれたジャスミンティーをひと口飲む。


前回の大型連休で訪れた台湾で購入したこのお茶も、彼女が淹れるととびきり甘く感じる。


ちなみに朝は料理下手と誹(そし)った妹も、紅茶や中国茶を淹れて貰うとやはり美味しい。


なのに私が同じ茶器で同じように淹れても、どうしてか全く違う味になる。その色味は濃く、苦味たっぷりだから飲めたものではない。


もしや、こんなところでも愛情のなさが露見するのかしら……?



のんといえば今朝、車中で終始、“お見合い断固反対!”を連呼していたことを思い出す。


「幸せへのベクトルは人それぞれよ」

そう何度言い聞かせても食い下がって来るので、さすがに辟易したが、彼女の優しさはここでも表れていた。


“結局、柚ちゃんは結婚に逃げたんだよ!”と、正面切って詰ってくれた方が良かったのに。


のんの中ではきっと、ふしだらな姉と風船な祐史が結ばれるものとしていて、この結末にひどく失望したはずだ。



それでも最後は、「柚ちゃんは本当に、このまま結婚して幸せになれるの?」なんて聞いてきた。


< 158 / 208 >

この作品をシェア

pagetop