ためらうよりも、早く。
そして、水橋さんが帰宅前に淹れてくれたジャスミンティーをひと口飲む。
前回の大型連休で訪れた台湾で購入したこのお茶も、彼女が淹れるととびきり甘く感じる。
ちなみに朝は料理下手と誹(そし)った妹も、紅茶や中国茶を淹れて貰うとやはり美味しい。
なのに私が同じ茶器で同じように淹れても、どうしてか全く違う味になる。その色味は濃く、苦味たっぷりだから飲めたものではない。
もしや、こんなところでも愛情のなさが露見するのかしら……?
のんといえば今朝、車中で終始、“お見合い断固反対!”を連呼していたことを思い出す。
「幸せへのベクトルは人それぞれよ」
そう何度言い聞かせても食い下がって来るので、さすがに辟易したが、彼女の優しさはここでも表れていた。
“結局、柚ちゃんは結婚に逃げたんだよ!”と、正面切って詰ってくれた方が良かったのに。
のんの中ではきっと、ふしだらな姉と風船な祐史が結ばれるものとしていて、この結末にひどく失望したはずだ。
それでも最後は、「柚ちゃんは本当に、このまま結婚して幸せになれるの?」なんて聞いてきた。