ためらうよりも、早く。
「どう、やって」
直前までお茶を飲んでいたくせに。干上がった砂漠に放り込まれたかのように、渇いた口は上手く言葉を紡げない。
それも致し方のないこと。——もう二度と会わないと決めた、祐史が現れるなんて想定外だ。
仕事帰りのまま訪れたと分かるスーツは、今日もお洒落に着こなしているから口惜しいもの。
すると彼はネクタイを窮屈そうに少し緩めながら、混乱する私に小さく笑ってみせた。
「俺には昔から“アッキー”っていう、強い味方がいるの忘れてた?」
「あ、きが……?」
ちなみに、アッキーとは尭を茶化して呼ぶ場合のあだ名だ。これを知るのは、昔馴染みの者だけである。
「“誰かさん”は相変わらず、俺からの連絡を拒否するんでね」
珍しく怒りを多分に含んだ口調の祐史に、自分の仕事部屋のはずなのに逃げたくなってくる。