ためらうよりも、早く。
チッと舌打ちをして腕を組むと、「アンタは足フェチでしょうが!」と付け加えてやった。
「え?違うよ。——柚ちゃんフェチなんだよね」
「おあいにくさま。私は、祐史アレルギーなの」
「アレルギーも今は避けるばかりじゃなくて、徐々に慣らす治療方法もあるし。
——いずれ俺なしでいられなくなるよ」
「その前にアナフィラキシー起こしてやる!」
「その度に、エピペンみたいに“自己注射”してあげるから安心して良いよ」
「その性癖に既にショック死しそう」
「あ、なんなら今ここで“治療”する?
——柚ちゃんフェチは、ちょっと加減出来そうにないけど」
変態思考の男に軽蔑の眼差しを送るが、全く効き目なし。
頭を抱えたい気分の私は、このまま気を失えないだろうかと自らに念じた。
さらに自らの未来を呪っていた。——この妙な空気に、どんどん浸食されて馴染んでいるじゃないと……。
こうして半ば投げやりになっていると、いつもの調子を取り戻した男が顔を傾けたその瞬間、性急に唇を塞がれていた。
「ちょ、」
「うるさい」
そのひと言でムッとし、身勝手で柔らかな感触から逃れるように顔を逸らす。