ためらうよりも、早く。


チッと舌打ちをして腕を組むと、「アンタは足フェチでしょうが!」と付け加えてやった。


「え?違うよ。——柚ちゃんフェチなんだよね」

「おあいにくさま。私は、祐史アレルギーなの」

「アレルギーも今は避けるばかりじゃなくて、徐々に慣らす治療方法もあるし。
——いずれ俺なしでいられなくなるよ」

「その前にアナフィラキシー起こしてやる!」

「その度に、エピペンみたいに“自己注射”してあげるから安心して良いよ」

「その性癖に既にショック死しそう」

「あ、なんなら今ここで“治療”する?
——柚ちゃんフェチは、ちょっと加減出来そうにないけど」


変態思考の男に軽蔑の眼差しを送るが、全く効き目なし。


頭を抱えたい気分の私は、このまま気を失えないだろうかと自らに念じた。


さらに自らの未来を呪っていた。——この妙な空気に、どんどん浸食されて馴染んでいるじゃないと……。


こうして半ば投げやりになっていると、いつもの調子を取り戻した男が顔を傾けたその瞬間、性急に唇を塞がれていた。


「ちょ、」

「うるさい」

そのひと言でムッとし、身勝手で柔らかな感触から逃れるように顔を逸らす。


< 200 / 208 >

この作品をシェア

pagetop