ためらうよりも、早く。
まるで某アニメの猫とねずみを絵に描いたような私たちは、こんな時まで追いかけっこに興じてしまう。
とはいえ、現在の居場所が好敵手(ライバル)の腕の中。勝負はすぐに決着がついてしまう。
背中に回っていた腕が解けたと思えば、今度は大きな手のひらでそっと頬を包まれる。
眼前にある顔を忌まわしげに見つめながらも、縮まる距離をそのまま受け入れることにした。
あたたかな唇を重ねられ、なぜか口惜しい私は相手の下唇を甘噛みする。
すると間髪入れずに、唇の端にキスをされてしまってまったく効果ゼロ。
観念して彼の下唇をひと舐め仕返したのだが、どうやら無駄に煽ってしまったらしい。
そう気づいたのは、容赦なく侵入してきた熱い舌にピクリと肩を小さく揺らしてからのこと。
「んんっ、」
瑞々しい音の最中に漏れる、自らの鼻にかかった甘い声が室内に木霊していく。
角度を変えながらキスの攻防は続き、絡め合う舌先はさらなる熱をもって呼吸を荒立てる。