ためらうよりも、早く。
——父親とおじさま(ここは無罪放免)とこの不埒な男のトリオに騙されたとか、一生の不覚だわ……!
「そういうこと。見事な推理力だねー。やっぱり、夜中でも冴えてるな。
そもそも考えてみてよ?——俺以外、柚希に見合う男がこんな短時間で見つかるわけないし」
「はあ!?絶対、前から仕組んでいた筈よ!むかつくぅううう!」
屈辱感なのか自分に対する落ち度かは不明だが、取り敢えずイライラは絶好調に高まっている。
そんな私のバッグを手にすると、祐史は私とは対照的に穏やかな笑みを浮かべて口を開いた。
「そっちも車通勤だし、明日から出張だと自宅に置いておく方が安心だろ?
とりあえずそれぞれ車に乗って、柚希の家に行こっか」
まるで形式的に話す男に、「ふざけ、」と拳を握りしめたところで悲しそうに笑われる。
「うん、許してとは言う資格ないよ。それだけのことをしてきたからね。
だから、これから殴られても蹴られても良い。どれだけでも罵詈雑言は受け付ける。
でも、用意周到にしないと俺だって立つ瀬がなかったんだ……。
最低男に元々、プロポーズ出来る権利もないのは分かってたけど、諦められなかったんだ。ごめんな、こんな男が見合い相手で。
でもね、もう柚希を失わないためなら俺はどんな権力でも行使して裏工作するよ。
——これが俺なりの愛し方だから」