ためらうよりも、早く。
ひとりでは生きていけない、というフレーズの真意を学んだ先で見つけたものがある。
本当に伝えたいことは口にしなければ始まらない。
後悔をしたくないから今を必死に生きていたい。
あれこれ案ずるのなら、いっそトライして失敗した方が清々しい。
命には限りがある。いつ何時、何が起こるか分からない。
そして、大人になるほど時間の経過が早い。
だから、独りよがりの下手な回り道はもう止めて、アドバイスと経験を糧に直線をひた走ろうと思う。
この後でエレベーターに乗り込んだら、ためらうよりも早く、目の前の男に「愛してる」って伝えるつもりだ。
きっと甘やかなキスをくれるであろう祐史と、これからの時間を共有するためにも少しは素直にならなきゃね。
愛しいルブタンを履いた足で一歩踏み出せば、また新たな世界が待ってるはず。
覚束ない足取りの女を受け止めてくれるのはきっと、今まで密かに求めていた相手との本当の安らぎのときと信じて……。
ためらうよりも、早く。★終