ためらうよりも、早く。
「やっと呼んでくれた。会いたかったから来ただけ」
——それが世界にも名を轟かせる、東条グループの有能部長と誉れ高き男。それがコイツ。
「さっきからずっと鳥肌が立ってるんだけど」
「そんなヤツと繋がったクセに」
まあ私にとっては風船男もとい、約1週間前にセックスをした昔馴染み——桜井 祐史(サクライ・ユウジ)であった。
「そんなこと言いに福岡まで来たわけ?」
「いや……、柚希は知ってた?」
それまで革張りソファに悠然と座っていた祐史が、ギシリと音を立てながら立ち上がる。
さらにスタスタと軽快な足取りで、未だ出入り口ドアの付近で佇む私の元へ歩み寄って来た。
「柚ちゃん聞こえた?」と、のん以外には許さないその呼び方で再び尋ねてくる。
「アンタの風船度合いなら十分知ってるわ」
「おっ、それはちょっと厄介だ」