ためらうよりも、早く。
ニコチンの魔力に縋りたいところだが、機内はもちろん禁煙。お陰でガムと飴は必需品である。
ついに溜め息を吐き出すのにも疲れた私は、順調に日本上空を飛ぶ機内の窓に目を向けていた。
真っ暗な上空とは対照的に、ところどころ煌めく地上はそこはかとない寂しさを募らせる。
会えば感じる欲。会わなければ苛立つ感情。——果たして、どれを選ぶべきなのかと……。
定刻通りに飛行機は羽田へと到着し、同行していた彼らとは空港で現地解散することにした。
お金を渡してタクシーに乗せ、走り去る姿を見届けてから私も別のタクシーに乗り込んだ。
運転手に告げた行き先は会社ではなく、これからが本番と言わんばかりに賑わいをみせる場所。
大通りの路肩に停車して貰うと精算を済ませて降り、交通量も人も多いそこをさっさと離れた。
歩き進めて一本奥に入ると、賑々しさが失せて静寂を感じられる雰囲気が昔からなぜか好き。
さらにその道をコツコツと、ルブタンの靴音を立てながらアスファルトを蹴るのは心も弾む。