ためらうよりも、早く。
機内では帰社か直帰か迷っていたのも、即断即決女には珍事。けれど、タクシーに乗り込むと、全く別の行き先を告げていた。
この自分でも手に負えないような状態でイイ仕事なんて出来ない。これに尽きる。
しかし、オフィスで作業をするのもさっきの二の舞だろう。これも無駄な時間だ。
また自宅に帰っても、頭を整理する前に朝の問題で家族に捕まるのは確実だろう。
ということで、こういった時は直感がものを言う。車中ではそう納得をしていた。
ちなみに、スマホに登録してある男と連絡して騒ごうとか、セックスに興じたいなどとは微塵も感じられず。
たとえ、会って身体だけ欲に任せた絶頂を味わっても、この憂鬱な気分が消えないのは分かっているからだ。
選りすぐりの彼らとは、会って楽しく過ごせなければ何の意味もなさない。これは私的鉄則だもの。
「……面倒ね」
福岡の華やかな市街地の景色とは打って変わり、さらに煌々としたイルミネーションが目に痛い。
また見上げれば首が痛くなるほどの高層ビル群に囲まれ、どこか窮屈な都内でつい呟いてしまう。
タクシーを降りてかれこれ10分ほど歩いただろうか、角地に建つ一軒の低層ビルが目に入った。