ためらうよりも、早く。
そして平然とブラックコーヒーを飲んでいれば、カチャンと少々雑にカップを置いてからナプキンで口を拭っている。
「また割れるわよ?」
「はしたないのはドッチ!?柚ちゃんに言われたくないよっ!」
窘めるとむむっとした様子で言い返してきたが、今もナプキン片手に小さく咽せており、こちらが不憫に感じてしまうのも仕方のないこと。
「のん、大丈夫かい?」
カラ元気のような父まで心配しているが、「大丈夫」と咽せながら言うのでまるで説得力がない。
本日のテーマは地中海という母のテーブル・コーディネイトだったが、一部分がミルクティー色に染まっている現在。
——いっそのこと“爽やかなブルーの世界に砂嵐が発生”、にテーマを変えた方が良さそうだ。
「柚ちゃん、いつも平然としてるから口ケンカにもならないよね」
「お姉さまは寛大なのよ」
「えー、よく言うよぉ。優しいお姉さまだったら、はしたないなんて妹に言う?」