ためらうよりも、早く。


そんな内外ともに素晴らしくイイ男のおもてなしに、口をつけずとも分かる美酒やおつまみたち。


――涸れかけた心をそっと宥めてくれる此処は、私のような客を日々癒しているのだろう。


目の前の冷えたグラスを手にし、ゆっくり口をつければ、しゅわしゅわと細かい泡が口の中で弾けた。


炭酸なのにあっさりとした飲み口で、ウォッカの香りも仄かに感じられて心地よく、見た目そのままにとても爽やかな味だ。


ホッと落ち着いたような気がするのは、笑顔で酒を勧めてくれた煌くんの洞察力あってこそ。


もし、リクエスト通りに1杯目からスピリッツのいずれかを口にしたら、呆気なくお酒に溺れて醜態を晒しただろう。


はたまた、ドイツ産の白ワインが運ばれてきたら、そのままワイン・ボトルを抱えて愚痴を零す危険だってあった。


ということで、日頃からお酒そのものを味わう自称・酒類愛好家は、可愛らしくカクテルに酔いしれることは皆無。


初めて出合ったスカイフィズをゆっくり飲み干し、極上フルーツで小腹も満たす時間が少しだけくすぐったい。


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