ためらうよりも、早く。
風船男にあんな顔をさせられる相手は誰なのか。——最も肝心なそれを聞けないままだ。
精神的にも未熟だった高校時代、幼馴染みを取り払って破瓜の痛みを知ったのが1度目。
そして大人になり、お互い様々な快楽を味わった後、なぜか肌を重ねてしまった2度目。
祐史とセックスしたのは回数にしてたった2回。でも、それが昔馴染みという、綱渡り状態の不安定な関係を簡単に壊してしまった。
まとまらない考えから逃げるように、食べ終えたさくらんぼの茎を口に放り込む。
自らの舌を巧みに使ってあっさり茎を結べるほどキスが上手くなっても、今となっては無意味な産物。
出来上がったそれを口内から取り出すと、ちょうど中央あたりで紐状に結ばれた姿に失笑したくなる。
だから、結んだ中心あたりをふたつにポキンと折ってしまう。——固く見えても、所詮は儚い絆だと。
相手を喜ばせるために教わり、培ってきたテクニックは私の密かな武器なのに。
自信と快感に満ちたセックス・ライフに、思いきり泥を塗られたから苛立つわ。