ためらうよりも、早く。
「もう終わりにしよう」と、最後に振り向いて言ってくれたのに、その表情は溢れる涙で滲んで見えなかった。
終わり方まで絢らしい優しさに満ちたもので、後味の悪さと後悔が痛みとして心を蝕んでいく。
あれ以上、謝り続けても彼をさらに傷つけるだけ。私が何をしてもエゴでしかなく、「ありがとう」とは言えなかった。
ここ数日で分かったのは結局、自分の振る舞いで人を傷つけていた事実だけ。
何年も泣いたことがなかったのに。今も瞳からポロポロと溢れる涙は、ひた隠しにしてきた弱さを引きずり出すよう。
最高の男を傷つけてきた、みっともない女。——これが今の私の評価だろう。
ここまで人を傷つけて初めて、あの男が愛しく感じるとは目も当てられない。でも、この想いを認めるにはあまりにも遅すぎた。
それでいて、平気で「愛してる」と言うような風船男に無性に会いたくなっている私の頭はどうかしている。
でも、そんな衝動を止めてくれたのは、もうすぐ結婚する昔馴染みという不変の現実だった……。