ためらうよりも、早く。


さすがの私も諦めて背もたれに身を預けると、足を組んで目を閉じてしまった。


車が走行し始めたところでスマホを取り出すと、いま分かれたばかりの尭からSNSでメッセージが届く。


しかし、その内容に苛々が爆発しかねないと既読スルーの刑に処すことにした。


可愛いのんに免じて、“ちょっとした“意地悪に留めたのがいけなかったらしい。


尭のヤツ、明日は本当に覚えてろ。その思いを助長させたのは文面のせいね。


“これ以上、大切な仕事もないですよ”って、……私への宣戦布告と取るわよ?と。


そう何も知らずに敵地へ向かっている時点で、相手の術中に塡まっているとも気づかずに……。


タクシーが到着したのは発車して15分ほどの距離にあり、屈指の高級住宅街に佇む一軒のお店だった。


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