ためらうよりも、早く。
「……お帰り。これで満足?」
淡々と返しているはずなのに、それを聞いた彼の表情は一層にこやかになった。
「誰かさんが拒否設定にしてくれたんで、尭と柚ちゃんの秘書室に直通で連絡入れた。
そしたら昼前に終わるって聞いたんで、ここで会おうかとね。——結果、逃げられなかったでしょ?」
「おかげさまで、お節介な義弟と有能秘書が私ひとりを放り込んだのよ」
「結果的に、俺が得したってわけね」
「私は貧乏くじを引いたのね」
「ひどいなぁ」なんて言って、人の肩に引き寄せてエスコートする彼。
なるほどと合点がいく。——この男が呼んだのは、私の他に2人いたはずだと。
「尭のヤツ、明日じゃなく今日のうちに仕返ししなきゃ」
「俺は借りが出来た」