Revive
僕は意味が分からず、夢野の方を見た。
夢野も僕の方を見る。
しばらくすると、
夢野が口を開く。
「こいつは俺と話がしたいらしい」
夢野は霧島を見て言った。
そして僕を睨み付ける。
「そうなんだろ?転校生。」
夢野が僕に聞いてくる。
たしかに僕は話がしたいと言った。
なぜかもっと夢野のことを知りたいと思っている。
僕が頷くと、霧島は僕を見つめる。
「そ・そうか。」
霧島はそれだけ言うと走って行ってしまった。
夢野は、ハァと息を吐く。
「まだ何も知らないみたいだが、
いずれ分かることだ。」
夢野はまた仰向けに寝転がった。
「まだ時間はある。
話したいことって何だ?」
夢野は僕が不思議そうな顔をしているのを見て
面白そうに少し微笑んだ。
「どうせお前も、あいつらと同じ・・・。」
夢野はそう言うと、目を閉じた。
僕は何も言えないまま、ずっと夢野の隣に立っている。
そういえば僕はずっと不思議に思っていたことがある。
僕がこの学校に転校してきた初日から。
しかし、そのことを夢野に話したらどうなるのだろうか。
チャイムが鳴った。
昼休みの終わりを知らせるチャイム。
しかし、夢野は動かない。
「お前は先に教室に戻れ。
ここで2人で一緒に教室に戻ったら・・・、
いや、どっちにしろさっきの男がみんなに喋る。」
夢野にそう言われ、
僕は意味が分からないまま1人で教室に戻った。
教室の前まで来ると、騒がしい声が聞こえた。
僕が教室に入ると、田口と磯谷が恐怖に怯えたような顔をして
座っているのが見えた。
田口が僕に気付くと顔をあげた。
「空野。」
田口はそう言うと、僕に近付いてきた。
「お前、トイレに行ってたんじゃなかったのか!?
霧島が屋上で2人を見たと言ってきた。」
田口は大きな声で言った。
「トイレには行ったけど、夢野の姿が見えたから。」
僕の言葉にクラス全員が注目した。
「姿?あいつ、気付かれないように行動するって約束はどうなったんだ?」
田口は訳の分からないことを言う。
約束?なんのことだ?
「空野、俺達は友達だよな?」
田口は僕の肩に手を置いた。
「?もちろん。友達だよ。」
僕はそう言うと田口は頷いた。
「友達としてこれだけは言っておく。
俺はあいつが好きじゃない。
あいつには関わらない方が良い。」
田口は汗を拭いた。
「ど・どうして?」
僕は怖くなってきた。みんなが僕を見ている。
田口がこんなことを言っているのに誰も何も言わない。
「あいつは1人が好きだ」
磯谷は、思い付いたように言った。
「見ててわかるだろ?あいつはいつも1人でいる。
それを望んでいるから、俺達は近づかない。」
磯谷の言葉は理解できた。
夢野も同じことを言っていたし、
1人が好きなことも何となく分かっていた。
しかし、クラス全員の様子がおかしい。
「今、空野が不思議に思うのは、
意味が分かっていないのは、
空野が転校生だからだ。」
磯谷の言葉で僕は、自分が何故この場所にいるのか分からなくなった。
「このクラスのことも、
夢野類のことも、
俺達が1番良く知っている。
でも、転校生である空野は何も知らない。
俺達の言うことを信じてほしい。
あいつには関わらないでくれ」
僕は頭の中で考えた。
たしかに僕は転校生で、
このクラスのことを何も知らない。
そしてあの夢野類のことも。
しかし、それなら
田口や磯谷、ここにいるクラス全員
僕のことを何も知らない。
何も分かっていない。
それに、なぜ関わってはいけないという理由を
いつまでたっても話そうとしないのだろうか。
転校生の僕には話せないと言うことなのか。
「何かよくわからないけど、
田口や磯谷がそう言うなら、
分かったよ。
僕はもう夢野には近付かない。
それにさっき磯谷が言ったように
夢野にも1人が好きだと言われたばかりだしね。」
僕はそう言うと自分の席に座った。
僕は転校生だ。
まだ1ヵ月。
いや、もう1ヵ月。
僕はこの先いつまでも
このクラスにとっては転校生の空野翼なんだ。