Revive
チャイムが鳴り、再び教室が騒がしくなる。
後ろを振り向くと夢野はいなかった。
チャイムが鳴った瞬間、すぐに教室を出ていってしまったらしい。
その時、僕の隣の席に座っている女子が話しかけてきた。
「空野君。私、秋山千尋。よろしくね」
秋山という女子は僕に微笑んでそう言った。
肌がとても白くて、綺麗でサラサラな黒髪だった。
笑顔が可愛いかった。
僕は自分の顔が熱くなるのを感じた。
「あ、うん。よろしく。」
そして、次々に他の生徒達も僕に話しかけてくれた。
僕にとっては信じられない光景だった。
その時、特に仲良くなれたのが田口祐介と磯谷涼だった。
2人共サッカー部に所属しているらしく、明るくて面白い2人だった。
「空野は羨ましいよな~!!」
昼休みになり、僕と田口と磯谷の3人で外に出て歩いている途中で
磯谷が僕にそう言った。
「え?なんで?」
僕は驚いて聞く。
「だって、あの秋山の隣の席だろ?羨ましいよ。」
磯谷はそう言うと、田口も頷く。
「可愛いだろ?きっとクラスのほとんどの男子は、秋山のこと好きだろうな」
田口にそう言われ、僕は秋山の微笑んだ顔を思い出す。
「たしかに・・・可愛かったけど・・・」
僕は小さな声でそう言った。
すると磯谷は急に顔色を変えた。
「でも、あの日以来、誰もあの席に座ったことがないんだよな」
かなり小さな声で呟くように磯谷は言ったが、僕にはハッキリと聞こえた。
僕は「え?」と磯谷を見ると、前からボールが転がってきた。
「ごめーん!!」
前から秋山が走ってくる。僕はボールを拾った。
「あ!空野君だ!今バレーボールしてたんだ」
秋山は笑顔でそう言って、僕からボールを受け取ると
「ありがとう!」と言って走っていく。
その姿を田口と磯谷はニヤニヤしながら目で追っていた。
僕はボーッと秋山の走っていく姿を見つめる。
「な?可愛いだろ!?千尋ちゃん!」
田口はそう言いながら僕の背中を叩く。
「ああ・・・・・いや、そんなことより・・・」
僕は、さっきの磯谷の言葉が気になって仕方なかった。
しかし、ちょうど良いタイミングでチャイムが鳴る。
「もう昼休み終わりか~」
磯谷達はそう言って歩き出す。
さっきの磯谷の言葉は僕の聞き間違いだったのだろうか。
僕はしばらく考えたが気にしないことにした。