Revive



僕達は店を出て、しばらく2人で歩いた。

「新一兄さん、俺の前だと絶対に酒は飲まないんだ。
家の中でも・・・。でも本当は飲みたくて仕方ないんだ。
かなりの酒好きだから。
それで、何かイベントがあると
ああやって仲間集めて楽しむのが好きなんだよ。」

夢野は歩きながら背伸びをした。

「・・・それにしても、
いきなりサプライズで来てほしいなんて言われて驚いたよ」

僕がそう言うと夢野は笑う。

「俺も、今日が自分の誕生日だってこと忘れてて、
一緒に行きたい所があるからって言われて行ってみたら、あの店だったんだ。
誕生日パーティーなんてしなくて良いって毎年言ってるんだけどな。
去年の誕生日なんか新一兄さんと2人きりでさ、
色んな物買ってくるし、ケーキはいつもデカ過ぎて食えないし」


僕はさっき見た大きなケーキを思い出した。

そして次に、新一さんに言われた言葉を思い出していた。


【空野君と話せて良かったよ。
君は類の、初めての友達だからね】


僕は立ち止まった。

「夢野・・・」

僕は夢野の後ろ姿を見つめる。

夢野も立ち止まり、振り返って僕をみた。

そして夢野と目が合った瞬間、息を吸った。


「誕生日おめでとう!」


僕は大きな声でそう言うと、夢野の左目を見つめた。

夢野は驚いて僕を見ている。

「こうしてまた夢野が誕生日を迎えられたこと・・・
それを祝うって、凄く大事なことだと思うんだ。
新一さんだってきっとそう思ってる」

僕の言葉を聞くと夢野は下を向いた。


「誕生日パーティーなんかしなくても良いんだ。
ケーキもいらないし、プレゼントもいらない。
そうやって、言葉で言ってくれるだけ良かった・・・。
俺はそれだけで良いんだ。それが1番、俺にとって・・・。
でも新一兄さんはそれを理解してくれなかった。」

夢野はそこまで言うと切なく寂しそうな表情を見せた。

「いなくなったらもう、何も言えないからな・・・」


そして夢野は空を見上げた。
僕もつられて空を見た。
暗くなった空に小さな星がいくつも輝いて見える。

「生きていれば・・・明日は、俺の母親の誕生日だ」

夢野は自分の誕生日は忘れていたのに、
母親の誕生日はしっかりと覚えている。

空を見上げる夢野の瞳はいつもより綺麗で
星のように輝いてみえた。

すると夢野は僕を見て笑顔になる。


「今日は、最高の誕生日だよ」


夢野のその言葉が僕の胸に響いた。

僕達はそれからしばらく星を見ながら歩いた。

新一さんが電話してくれなかったら
僕は今ここにはいなかった。
今日が夢野の誕生日だと言うことを知らずに
明日を迎えなくて良かった。
明日になれば、今日という日はもう過去になってしまう。


夢野が新一さん達の所へ戻ろうと言ったので、

僕は笑顔で頷いた。






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