Revive



昼休みを過ぎてからは特に何事もなく、
あっという間に放課後になった。

僕は1人で帰ることにした。田口も磯谷も部活に行ってしまった。
僕は帰り道歩きながら、朝拾ったノートのことを思い出す。
ずっと鞄の中に入れたままだ。

家に着くと僕はすぐに鞄からノートを取り出した。
A5サイズの薄いピンク色のノートだった。
いかにも「恋ノート」らしいノートだ。
誰のものか名前が書かれていれば良いのだが、
残念ながら書かれていない。
もし同じ学校の生徒の物だとしたら、
勝手にノートを読むのはまずい。
このノートの持ち主の「好きな人」が分かってしまう。
でも僕は転校生だから、名前を知っても誰だか分からない
そもそも恋ノートに好きな人の名前まで書くのだろうか。
書くのだとしたら、そんなノートを道の真ん中に落としたりするだろうか。
普通、こういうノートは持ち歩いたりせず、
自分の部屋に置いておくものではないのか。
誰にも読まれないよう隠すのが普通だと僕は思う。

僕は暇だったのでパソコンの前に座ると
「恋ノート」と検索をしてみた。
すると、恋ノートについて書かれたサイトを見つける。
「テレビでも紹介された話題の恋ノート」
そこには恋ノートの画像が載っていた。
薄いピンク色のノートでその横に1200円と書かれていた。
それは今僕が持っているノートと全く同じ物だった。
僕の予想は当たっていた。やはり僕が拾ったのは誰かの恋ノートだ。
しかし、この恋ノートは1200円で売られている物らしく、
普通のノートやピンク色をしたノートでは効果がないという。
ノートであれば何でも良いものだと思っていた。
僕は一瞬、バカバカしいと思ってしまった。
好きな人について書くだけで恋が叶うなんて、
普通に考えたら有り得ない話だ。
なぜ女子はこういうのが好きで、信じてしまうのだろうか。
僕はそのサイトに目を通すと、更に分かったことがあった。
恋ノートに好きな人の名前を書いてはいけないらしい。
好きな人のことを思い浮かべながら、
その人の特徴や、想いを書いていくものらしい。
つまり、僕が持っている恋ノートの中を読んだとしても
好きな人が誰なのか知ることは不可能だということだ。
僕はもう1度パソコンを見る。
「え!?」
僕は驚いた。
この恋ノートを自分以外の誰かに見せてはいけない。
見られた時点でその恋は叶わなくなると書かれていたのだ。
僕は汗を拭いた。いや何で僕は驚いているんだ?
こんなの嘘に決まってる。それに僕はもう見てしまった。
仕方がない。
僕は恋ノートを手に取ると1ページ目を読んでいた。
朝に読んだ文章だ。


【私には好きな人がいます

彼は、優しい瞳をしています。

晴れた日の、

青い空を見ると、

いつも彼のことを思い出します。

彼は綺麗なブルーの瞳をしています】



1ページ目にはそれしか書かれていない。

ページをめくると僕は驚いた。
何も書かれていないのだ。白紙だった。
他のページを見ても何も書かれていなかった。
僕は肩の力が一気に抜けるのを感じた。
きっと恋ノートを買ったばかりの女性が落とした物なのだろう。
僕は机の上に恋ノートを置いた。
持ち主が分からないのだからどうすることもできない。
もし同じ学校の生徒の物だとしても、
探し出すのは難しいだろう。
僕はため息をつくとそのまま横になり
目を閉じるといつの間にか眠っていた。




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